PRATRUS（パトラス）持続性除菌スプレー｜agenes

COVID-19

COVID-19(新型コロナ感染症)が広まり始めた当初、最も代表的な風邪症状ウィルスであるCoVタイプウィルスであることから、そう特別な対応は必用ないのではないかと思われていましたが、重症急性呼吸器症候群原因のコロナ亜種SARSタイプのウィルスSARS-CoV-2であること、感染力が強く無症状状態での感染から広がりやすいこと、一部の基礎疾患及び高齢者ではARDS（急性呼吸窮迫症候群）、多臓器不全に進行する重症化症状が発生することがわかるにつれ、厄介で長く続く感染症であることが議論されました。特に重症化についての対策が必用だろうということで、私達はグループ医療機関と連携しCOVID-19重症化原因のサイトカインストーム（攻撃性免疫による過剰炎症）の対策治療研究を開始しました。
複数あるグループ医療機関には、連日のようにCOVID-19疑いのある患者さんが来ます。サイトカインストームの研究の中で数多くの世界の臨床例やSARS-CoV-2ウィルスの特性を発表する論文を網羅する中で、このウィルスが想像以上に環境で長く活動することがわかり、特に間接接触感染を効率的に防ぐ術が必用であることがわかりました。

SARS-CoV-2 環境活性条件2020/4/13現在調べ

持続性を持たせないと意味がないじゃないか

多くのキャリアが必然的に集まるクリニックは極めてウィルス接触確率が高い環境です。研究結果で２２℃環境では７日間ウィルスが生存することがわかっています。除染用エタノールやオキシドールは極めて瞬間的なウィルス失活能力を持ちますが、揮発性も高くすぐに蒸発して間接感染源となるモノの表面では持続せず、また新たなウィルスや菌が付着しても防ぐ術がありません。

グローブは外せばよいですし、手はしっかりと石鹸で洗うだけで適切に対策は可能です。そこで私たちは白衣やグローブ、ドア、イス、テーブル、器具上に長時間ウィルスへの防御性を持たせるための方法を探しました。揮発しないウィルス失活成分はすぐに見つかりました。長年利用経験があったGSEやユーカリがコロナを含むエンベロープタイプウィルスだけでなくノロウイルス、緑膿菌など強固な微生物を失活することは昔から良く知られています。また、長い歴史の中で６５０種類以上のあらゆる菌に対する試験結果や新型ウィルスに対する試験データもすぐに見つかりました。

次に重要なのは、除菌成分が分散して対象物にきちんと付着することです。保護膜を形成する必要がありました。この対策方法の答えは私たちが長く取り組んできたドラッグデリバリシステムの層形成技術にそのヒントがありました。こうして、持続性を持たせた試作品はin vitro（試験管内試験）で、想定した通りの持続性を発揮してくれたのです。

手洗いの効果

漂白剤を撒いている！？

一方世間ではエタノールなど除菌成分を含む液剤が不足し、代替品を利用するようになっていたわけですが、研究員の子供が通う保育園では漂白剤を薄めて除菌対策をしていることがわかりました。確かに漂白剤は希釈しても除菌性は発揮されますが、揮発した成分は吸入するにはあまりにも刺激的すぎます。そこに通う子供、園児達の健康面が気になります。「間違って触れたり、誤飲、吸入しても安全性の高いものが必用だ」このことから、研究開発する除菌剤は配合する全ての成分が食経験のある成分であることが必用となり、安全性の高い成分のみで開発は進んだのです。

また、ナースからは連日過剰に使用されるエタノール噴霧による手荒れの不満があがっていました。医療器具や皮膚の消毒などは、エタノールの使用は必須ですが、一方でイス、ソファ、デスクなど什器類の衛生清掃や、白衣、マスクなどはすぐに揮発してしまうエタノールの特性上、連続して菌・ウイルスに曝露されるものの衛生管理にはアルコール以外のものが欲しいとの声があがりました。こうして、微生物失活能力を持ち、同時に安全性の高いノンアルコールの除菌剤の開発調整は進みました。

第三者機関でしっかり再現証明をしよう

開発は急ピッチで進められ、約半年で現場での試用や試験販売も含めて開発と調整は完了しました。しかし、医療機関や子供のいる環境での使用にはもうひとつ、我々が研究室や臨床現場で自主試験した効果が、本当であるのかを確認する必要がありました。これは、医療研究を主業とする私たちにとって、日常のことですが、調べてみるときちんとした試験データを公開している製品が驚くほど少ないこともわかりました。ところが、試験を受託してくれる機関がコロナ過の影響で、新規の試験を受け付けてくれないという非常事態がおきました。
「こんなことあるのか」
普段ならありえない話です。困った私たちは、普段、創薬研究で研究交流する複数の大学研究室に相談を持ち掛けました。場違いな相談ですが、好意をもって試験系を受けてくれたのは、感染症研究の最前線の大学医学系研究室「帝京大学鈴木幸一研究室」でした。鈴木教授は日米の国立感染症研究所出身の感染症研究のスペシャリストです。ウイルス・病原性菌について知り尽くした最前線の感染症研究者が助けてくれることになりました。
普段から細胞へのウイルス感染についての研究開発を行っていた研究室では、いくつかの試行錯誤の上、我々の開発した除菌液を研究用のコロナウイルス株に対して惜しみもなく使い、培養した細胞に除菌ウイルスを播種して、細胞に感染するのかを調べました。バイオハザードレベル３の大変な試験です。
また、製品の目標である保護膜の長期間でのウイルス失活能力も同時に実施されたました。シャーレ上で形成された保護膜に一定期間を置いてからウイルスに接触させ、そのウイルスを更に細胞に播種して感染をするかどうかを確認します。結果は成功でした。ウイルスは細胞に感染しないことが確認され、ウイルスはきちんと失活したことが証明されたのです。

きちんと製造をしよう

こうして新しい持続性特性を持つ除菌剤研究は完了しました。しかし、これをクリニックに届ける為には、製品化が必要です。私たちのラボ・製造設備では無菌製剤なども扱うので衛生環境は問題がないのですが、小規模設備で量の衛生的・安定生産が出来ません。ここで助けてくれたのが、創業から支援してくれているグループの製薬会社でした。本業は医療用医薬品の製造工場です。こちらの製品は家庭用雑品でこれもまた場違いな感があります。しかもロットが小さい。普段大手の製品は数十万～数百万規模で製造を行うものです。普通なら門前払いされるところですが、工場技術者達は私たちの開発した製品の量産を受けてくれました。こうして、パトラス持続性除菌スプレーは、製品としてようやく完成したのです。

パトラス持続性除菌スプレーの研究開発と製品化は、多数の方の温かい支援で成り立ちました。
医師、看護師、薬剤師の皆様。研究室研究員の皆様。試作品を試用してくれた保育園、クリニック、企業、店舗の皆様。
改めて、感謝致します。そして、この製品が、使用する皆様のお役にたてれば幸いです。